AN AMERICAN HAUNTING/イギリス・カナダ・ルーマニア・アメリカ
監督:コートニー・ソロモン
<主なキャスト>
ベッツィ・ベル/実体の声:レイチェル・ハード=ウッド
ジョン・ベル:ドナルド・サザーランド
ルーシー・ベル:シシー・スペイセク
リチャード・パウエル:ジェームズ・ダーシー
ジェームズ・ジョンストン:マシュー・マーシュ
ジョン・ベル・Jr:トム・フェル
ケイト・バッツ:ゲイ・ブラウン
……etc
日本では劇場未公開のイギリス・カナダ・ルーマニア・アメリカ合作のホラー映画。開拓時代のアメリカで実際に起きたとされる「ベル・ウィッチ事件」を基にして書かれ、1995年に刊行されたブレント・モナハンの小説「ベル・ウィッチ:アメリカン・ホーンティング」が原作となっている。「ベル・ウィッチ事件」はアメリカではかなり有名な怪奇談でこれまでにも幾度となくドラマのモチーフとされたという。今作では19世紀のベル一家が経験した超常現象と並行して、現代の少女を巡る現象が並行して描かれる構成となっている。
19世紀初めのアメリカ合衆国南部のテネシー州北部のロバートソン郡で起こったという、「ベル・ウィッチ事件」と呼ばれる幽霊騒動が伝えられている。今日でも「アメリカ合衆国最悪の幽霊事件」などと呼ばれる、アメリカでも有名な怪奇現象なのだそうだ。事件の“被害者”であるベル一家は、家長のジョン・ベル・シニア(1750年~1820年)に率いられ1804年にノースカロライナ州からテネシー州へ移住したという。アダムズの町の近くに居住し、以前購入した農場に定住し、同地で最も成功した農園主の一人として大きな名声を得た。ところが突如、この一家を恐るべき怪現象が襲い始めた。
最初の異変は1817年の秋。ジョンが森の中で体は犬で頭は兎の奇妙な生き物を見かけたのが始まりだったという。その夜、一家の玄関の扉をノックする音が聞こえて扉を開けたがそこには誰もいなかった。その直後から、一家全員が異常な音を聞くようになった。耳鳴りや窓や壁を叩いたり引っかいたりするような音。床を鎖が引きずるような音。見えない動物が吠えあう声。そして囁くような誰かの声。家じゅうを調べたが原因は分からなかった。子供たちが異常な存在を目撃したことがあったという。一家の不安が募る中、やがて囁き声ははっきりとした声で意味のある言葉を発するように変っていった。現象は物理現象的な異常を伴うものに変わっていった。家具が動いたり、寝ていると毛布がはがされたり、子供たちが目に見えない何かに叩かれたりしたという。その主なターゲットとなったのは末娘で12歳のベッツィーだった。目に見えない存在はベッツィーの髪を引っ張ったり顔面を叩いたり、つねったり針で刺したりと暴力的なもので、ベッツィーには痣やミミズ腫れなどが出来ていたという。
この怪現象では、その異常を起こしている存在――ここでは怪異と呼ぶことにする――は、最初は囁き声だったがやがて明確な言葉を発するようになり、一家とも会話が可能なほどになったという。この現象に説明を求めるために、ジョンは知り合いの霊媒師に協力を求めた。謎の声は霊媒師に対して「ケイト・バッツ」と自ら名乗った。ケイト・バッツは近隣に住んでいた女性で、生前は近隣住人から魔女と呼ばれる変人だったという。ジョン・ベルとも、生前土地トラブルで揉めた経緯があったという。そのためケイト・バッツの呪いと一家は考えるようになっていた。アダムズの町の住人の間でもケイト・バッツの呪いという噂が広まり、怪異は「ケイト」とか「ベル・ウィッチ」などと呼ばれるようになっていた。また、ベル家の農場の近くには、魔女が集まり怪しげな儀式を行っていたと噂される洞窟があるという。また、ベルの農場がある地はネイティブ・アメリカンの埋葬地であったとも言われる。「ベル・ウィッチ」は聖書の詩に精通し、訪問者の秘密を暴露したり、時に他人の家庭を訪れることもあったという。
怪異はジョン・ベルの妻ルーシーに対してはある種の優しさをもって接していたという。逆に、ジョン・ベルに対しては、怪異は凶悪な敵意を向けた。ジョン・ベルは怪異が始まると口の麻痺を経験するようになった。怪異はジョン・ベルを「オールド・ジャック」と呼び、殺意を示した。1820年、ジョンは体調を崩し、起き上がれないほどに衰弱した。怪異は、ベッド脇でジョンを嘲笑する言葉を繰り返した。同年12月19日にジョン・ベルは昏睡状態になった。怪異は勝利宣言をして、自分がジョン・ベルを毒殺したと嘯いた。枕元には誰も見覚えのない黒い液体が入った小瓶が置かれていたという。翌日20日にジョン・ベルは死亡した。怪異は、歌を歌って弔問客の邪魔をした。ジョン・ベルの死によっても怪現象は終わらなかった。特にベッツィは、婚約者といる時には常に何かしらの嫌がらせを受けるようになり、1821年に堪えきれなくなって婚約を解消した。これを機に怪現象は終息した。怪異は一家にこれで去ると伝え、「7年後に戻ってくる」と言い残した。そして1828年に再び同様の怪現象が起きたという。
有名な話ではアンドリュー・ジャクソン将軍(後の第7代アメリカ大統領)がベル・ウィッチの噂を聞いてベル家を訪れたと伝えられている。ジャクソン将軍が部隊を引き連れて調査のために現地にやってくると、怪異はジャクソン将軍の馬車を止め、声をかけたという。その夜、数々の怪現象に見舞われたジャクソン将軍と部下たちは、恐れをなして逃げ出したという。そんな有名な事件だが、事件があったという1817年から1821年当時に「ベル・ウィッチ」に関する新聞記事や公文書は存在しないという。1894年に新聞編集者のマーティン・V・イングラムによって書かれた「ベル・ウィッチの真正なる歴史」によってこの怪奇現象はアメリカ中に知られるようになった。それまでは地元を中心に口伝で残された伝承であったとされる。その為、「ベル・ウィッチ」の事件そのものを伝説にすぎないと考える人や、怪現象の原因を怪異――霊や超自然的な存在以外に求める説も多く存在しているという。ベル家の農場の近くにあった魔女たちの洞窟は「ベル・ウィッチ・ケイブ」としてある種の心霊スポットとして観光資源化されているという。
2006年のアメリカ・テネシー州。古い屋敷に住む少女ジェーンは毎夜悪夢にうなされていた。その姿に胸を痛めていた母のエリザベスは、ジェーンが屋根裏から取ってきたという手紙と人形を見つける。手紙の冒頭に興味を持ったエリザベスは、ジェーンが落ち着いたのを見計らって手紙を読み進めた。その手紙に書かれていたのは1818年に、この家の主人ジョン・ベルと妻のルーシー、娘のベッツィーに襲いかかった悪夢のような出来事だった。
1817年――。農園主のジョン・ベルは、隣人ケイト・バッツと金銭や土地のことをめぐり裁判沙汰になるようなトラブルを抱えていた。法廷でケイトはジョンに土地を不当に奪われたと主張する。ジョンは使用人と100ドルを貸した代わりに土地を使用しただけだと主張する。ケイトは魔女と噂される女だった。裁判の判決に納得いかないケイトはジョンに呪いの言葉を投げつける。悪夢のような出来事は1818年の春に始まった。
ジョンは、隣人のジョンストンと森に狩りに行った。鹿を追っていた時、ジョンは大きな黒い狼に襲われる幻を見た。それからしばらくしたある夜、ジョンの妻ルーシーは奇妙な物音に気付いて目を覚ました。横に寝ているはずのジョンの姿がない。起き出してみるとジョンも奇妙な音に気付いて屋敷の中を調べていたのだという。ジョンは、これまでに度々奇妙な音を聞いていたと語る。そして、娘のベッツィーに得体のしれない“悪霊”のような存在からの攻撃が始まる。ベッツィーの教師のパウエル先生は悪霊など信じないと言うが、彼の前でも説明のつかない奇怪な出来事が次々と巻き起こる。
度重なる怪奇現象に耐えかね、ベッツィーを他所に移してみたが異変は続いた。万策尽きたジョンはついにケイトの所に呪いを解いてもらうように頼みに行くが、毛糸は憐みの視線とともに、呪いをかけたのは自分ではない、と告げ、自分で自分を呪ったんだ、と意味深なことを言う。ケイトの言葉を受けて絶望するジョン。そして“悪霊”の攻撃の矛先はジョンへと移っていく。
200年前の“実話”とされる出来事を基にしたホラー映画。この事件の元ネタの「ベル・ウィッチ事件」が実際にあったかどうかは今となっては伝説の向こう側だが、結局真相も闇の中に消えてしまった「ベル・ウィッチ事件」に、この映画では一つの結論を描いている。そこで描かれる真相は、ベル一家に隠された秘密、人間の業の深さだった。途中までは重苦しく不気味な雰囲気が良く、突然の大きな効果音で意図的に驚かせるような手法など目新しさはないものの典型的なアメリカンホラーだったと思う。真相に気付くと、怖さよりも悲しさの方が印象に残る。
1976年にドイツで悪魔祓いによって23歳の女性が死亡し、過失致死で神父が裁判にかけられた事件。舞台をアメリカにして、悪魔の存在を問う法廷サスペンスの趣があるホラー映画。