KASKY:TEARS OF APRIL/フィンランド,ドイツ,ギリシャ
監督:アク・ロウヒミエス
<主なキャスト>
アーロ・ハルユラ:サムリ・ヴァウラモ
ミーナ・マリーン:ピヒラ・ヴィータラ
エーミル・ハレンベルグ:エーロ・アホ
マルッタ:ミーナ・マーソラ
ペーア・ハレンベルグ:リーナ・メイドレ
コンスタ:スレヴィ・ペルトラ
陸軍少佐:ミッコ・コウキ
陸軍中尉:ヤンネ・ヴィルタネン
……etc
2011年5月に劇場公開されたフィンランド、ドイツ、ギリシャの制作による戦争ドラマ。内戦末期のフィンランドを舞台に、その中で敵味方として出会った男女の恋愛を軸に、内戦の恥部を描いた作品。
北欧のフィンランドは、19世紀初めの第二次ロシア・スウェーデン戦争の後にロシア帝国に併合されフィンランド大公国であった。1917年のロシア革命を契機に、同年12月にフィンランド議会はロシアからの独立を宣言する。発足したばかりのソビエト連邦はフィンランドの独立を承認する。しかし、独立を宣言する以前からフィンランドの内政は混乱しており、食糧不足や高い失業率、不況などに喘いでいた。そんな中、自作農や資産家階級によって結成された白衛軍と小作農や労働者によって結成された赤衛軍が対立していた。
独立が承認されると共産主義政権が生まれたが、白衛軍と赤衛軍の間で内戦が始まった。白衛軍がドイツ帝国とスウェーデン義勇軍の支援を受ける一方、赤衛軍はロシア・ソビエト連邦社会主義共和国の支援を受けた。序盤はロシア軍の残存勢力などの支援を受けた赤衛軍が優位に戦いを進めた。フィンランド議会は内戦が勃発すると1月28日に首都ヘルシンキを脱出し、ヴァ―サに臨時政府を樹立した。勢いに乗る赤衛軍は3月半ばまでにフィンランド南部を制圧した。しかし、赤衛軍は兵士の練度不足、将校の能力不足、軍の規律の乱れなどがあり、緒戦の有利な状況を活かすことができなかった。2月に入ると白衛軍はドイツ帝国に援助を求め、ドイツからは一個師団が送られた他、海上からも戦艦から赤衛軍への砲撃が行われた。3月半ばに白衛軍は反撃を開始した。
白衛軍兵士の練度も高いとは言い難かったが、白衛軍の司令官を務める元ロシア帝国軍将校のカール・グスタフ・マンネルハイムとその部下は、第一次世界大戦の東部戦線で十分な訓練を受けていた。赤衛軍の拠点は次々と奪い返されていった。4月6日に赤衛軍の主要な拠点であったフィンランド南西部の工業都市タンペレが白衛軍に制圧された。タンペレでの戦いは、フィンランド内戦の中で最大の激戦として知られている。戦いによる両軍の損耗もさることながら、白衛軍に降伏した赤衛軍の兵士数百名が処刑されたとか、捕虜となりタンペレ収容所に収容された11000人の赤衛軍兵士の多くが劣悪な衛生状態や栄養失調、伝染病の流行などによって命を落とすなど、血生臭い逸話が残されている。4月13日にヘルシンキも白衛軍によって制圧された。5月5日には赤衛軍の全ての拠点が陥落し、赤衛軍はロシアに逃れた。内戦終了後のフィンランドはドイツ帝国の支援を受け、フィンランド王国がわずかな期間誕生するが、ドイツ革命の余波によってフィンランドの君主制も覆され1919年には共和制に移行する。
1918年4月。フィンランド内戦の趨勢は白衛軍の勝利で決しようとしていた。そんな中、赤衛軍は強硬に抵抗を続けていた。赤衛軍の女性部隊を追い詰めた白衛軍は、女性兵士たちを捕虜にし、凌辱をした上に、逃亡兵として銃殺するというおぞましい行為を繰り広げていた。女性兵士たちのリーダー、ミーナは偶然の幸運によって生き延びた。白衛軍に捕らえられたミーナは、准士官アーロによって、捕虜として公正な裁判を受けるために裁判所に護送されることになる。アーロは非道な戦場の中で理想を捨てることができずにいた。
小舟での移動中、アーロから逃げようとしたミーナだったが、2人の乗った船は転覆し、無人島に流れ着く。軍人としてミーナを守ろうとするアーロと、女であることの武器を使って生き延びようとするミーナ。無人島での生活を通して、2人の間の感情に変化が生まれ始めた。助け出された2人は、エミール判事の元に辿り着く。知識人であり作家でもあるエミール判事は公正と名高く、アーロが信頼を寄せていた人物だった。しかし、エミール判事は虐殺が日常と化した世界の中で精神のバランスを崩し、葉巻とアルコールに依存するようになっていた。ミーナの助命に奔走するアーロ。エーミル判事を誘惑しようとするミーナ。しかし、エミール判事にはある秘密があった……。
フィンランド内戦は日本ではあまり馴染みはないこともあって退屈を感じるかもしれないが、人文小説を好む方には良作かもしれない、と思った作品。この映画での背景はフィンランド内戦であるがドイツやロシアなどの他国の兵士の介入にはあまり言及せず、同じ国民同士の醜く凄惨な戦いとして描いている。戦争における非道行為は、どんなに時代が変わったとしても必ず起こる上に、それを行ったのが勝者であれば、それは犯罪どころか英雄行為になってしまう。戦争のおぞましさや人間の醜さが画面いっぱいに描かれる中で、敵味方でありながら信念と愛に揺れ動くアーロとミーナの姿に胸が締め付けられる。
ラストでアーロは一身を投げだし命を捨ててミーナを逃がそうとし、ミーナはアーロとともに逃げることを望む。こういう書き方をすると、敵味方の間に芽生えた陳腐な恋愛劇、以上の印象を受けないのだが、そこに登場するエーミル判事の登場で、話が妙な方向に動いて行く。エーミルのアーロ、そしてミーナに対する異常というか奇妙な執着の仕方には当初違和感しか感じなかったが、その理由が明確になるとこの作品の中心はアーロとミーナの恋愛劇ではなく、それを通して描かれたエーミルの葛藤であったのではないかと感じさせられた。