ワールド・トレード・センター(2006年)







DATE

World Trade Center/アメリカ

監督:オリバー・ストーン


<主なキャスト>

ジョン・マクローリン:ニコラス・ケイジ
ウィル・ヒメノ:マイケル・ペーニャ
ドナ・マクローリン:マリア・ベロ
アリソン・ヒメノ:マギー・ジレンホール
スコット・ストラウス:スティーヴン・ドーフ
アントニオ・ロドリゲス:アルマンド・リスコ
ドミニク・ペズーロ:ジェイ・ヘルナンデス
デイブ・カーンズ:マイケル・シャノン
              ……etc



目次


『ワールド・トレード・センター(2006年)』の作品解説

キーワード『9.11アメリカ同時多発テロ(2001年)』

『ワールド・トレード・センター(2006年)』のストーリー

『ワールド・トレード・センター(2006年)』の感想



【作品解説】

 日本では2006年10月に公開されたアメリカ映画。社会派の第一人者とも呼ばれるオリバー・ストーン監督が、9.11アメリカ同時多発テロで倒壊したワールド・トレード・センターを舞台に、倒壊した瓦礫の中から奇跡的に生還した2人の警察官の実話を基にして描いた。



【9.11アメリカ同時多発テロ(2001年)】

 2001年9月11日の朝、ボストン発ロサンゼルス行きアメリカン航空11便、ボストン発ロサンゼルス行きユナイテッド航空175便、ワシントンD.C.発ロサンゼルス行きアメリカン航空77便、ニューアーク発サンフランシスコ行きユナイテッド航空93便の4機がハイジャックされた。

 午前8時45分頃。アメリカン航空11便がワールドトレードセンター北棟の93階から99階あたりに衝突した。衝突により漏れ出したジェット燃料に引火、爆発が始まった。さらに、エレベーターシャフトを通じて燃料が落下し、下層階でも爆発が起こった。この時は、航空機の衝突は事故であると見られており、すぐさまニューヨーク市消防局やニューヨーク市警察が救助のために現場に駆け付けていた。午前9時過ぎ、南棟の77階から85階のあたりにユナイテッド航空175便が衝突。爆発・炎上が始まった。北棟への航空機衝突を受けて集まっていた報道陣や一般人のカメラによって南棟に航空機が突入していく光景は収められ、その衝撃的な映像は世界中に配信されることになった。

 午前9時40分ごろ。アメリカン航空77便がアメリカ国防総省本庁舎――通称ペンタゴンに激突した。監視カメラの映像によればアメリカン航空77便の機体は水平に地面に滑走し、改装工事中のペンタゴン1階に激突した。77便の乗員乗客とペンタゴンのスタッフなど189人が死亡、106人が負傷した。高速で建物に衝突し、爆発・炎上した機体の残骸は原形をとどめないほど破損していた。

 30分遅れてニューアーク空港を発ったユナイテッド航空93便には乗員7人、乗客37名(うち4人が犯人とみられる)が乗っていた。ハイジャックされた機内ではワールドトレードセンターに航空機が突入したことを携帯電話などでの外部との通信で知り、ユナイテッド航空93便もどこかに自爆テロを仕掛けようとしていると考えた乗客たちが機の奪還のために戦ったと考えられている。午前10時5分ごろ、ユナイテッド航空93便はペンシルベニア州ピッツバーグ郊外に墜落。墜落時の速度は490ノット――時速900㎞以上の速度で地上に衝突したと考えられており、機体の残骸はほとんど原形をとどめていなかった。ユナイテッド航空93便をハイジャックした犯人はアメリカ合衆国議会議事堂か大統領官邸(ホワイトハウス)に自爆テロを敢行しようとしていたと考えられているが、目的を達することはできなかった。

 アメリカン航空11便とユナイテッド航空175便が突入したワールドトレードセンターは、航空機衝突によるダメージ、ジェット燃料が燃え続けたことによって構造部材の強度が著しく低下したことにより、約1時間後に南棟が、約1時間40分後に北棟が、避難中の人たちや、救助に向かった消防士や警察官などを大勢巻き込んで崩壊した。その崩壊に巻き込まれ、崩壊したり再生不能な甚大なダメージを負った建物も多かった。救出活動や瓦礫の撤去などに、約8ヶ月の時間を要したという。一連のテロによって日本人24人を含む2977人が死亡、25000人以上が負傷したとされる。インフラや物的な損失額は天文学的数値になり、凄惨な現場に居合わせ心的外傷ストレス症候群(PTSD)を発症したり、崩壊によって発生した大量の粉じんによって長期に及ぶ健康被害に悩まされる人も多く出た。

 捜査の結果、一連のテロ事件はイスラム教原理主義者の反米過激派国際テロ組織のアルカイダによるものであると結論付けられた。実行犯は合計19人。自爆テロによって全員死亡した。首謀者はアルカイダの指導者ウサマ・ビン・ラディンであるとされる。アルカイダが潜伏しているアフガニスタンのタリバン政権に彼らの引き渡しを求めたがタリバンはアルカイダが首謀した証拠を見せるように要求し、アメリカへの引き渡しを拒否した。アメリカ国民のテロへの怒りは、当時のジョージ・ブッシュ大領領の支持率を91%にまで引き上げたという。アメリカは有志連合とともに10月7日、アフガニスタンへの侵攻を開始。2ヶ月ほどでタリバン政権を崩壊させ、傀儡政権を樹立するも、紛争は泥沼化した。ブッシュ大統領はテロとの戦いを標榜し、反テロと大量破壊兵器の不拡散を掲げて2003年にはイラク戦争を始める。2004年10月、ウサマ・ビン・ラディンは中東の衛星テレビ,アルジャジーラが放映したビデオ声明の中で9.11アメリカ同時多発テロの実行を実行犯に指示したことを認めた。



【ストーリー】

 2001年9月11日。ニューヨークは穏やかに晴れた朝だった。その日が、アメリカを変えてしまう日になることなど露知らず、出勤してきた港湾警察の警察官たち。班長のジョン・マクローリン巡査部長の指示の下、警察官たちはパトロールに出て行った。しかし程なくして大きな爆発音が轟いた。出動していた警察官には急ぎ本部に戻るようにと命令が下る。

 警察官たちは、テレビのニュースで事件の第一報を知る。午前8時40分過ぎ、ワールド・トレード・センターのタワー1(北棟)に旅客機が激突というのだ。テレビでは噴煙を上げるタワー1の映像が映し出されていた。情報収集もままならない中、現場へと急行する警察官たち。しかし、その間にタワー2(南棟)にも旅客機が突入していた。到着した警察官たちが目の当たりにしたのは、逃げ惑う人たちや救助に駆け付けた消防隊員たちでごった返し、戦場の如き混乱の渦中にある現場だった。

 マクローリン巡査部長はビル内での救助のために志願者を募り、新人警官のウィル・ヒメノやアントニオ、ドミニクの4人でビルに入る。まず詰め所に向かって装備を整えたマクローリンは、そこで先に現場に到着していた警察官のクリスと合流し、5人はタワー1へと向かう。彼らはまだ、ワールド・トレード・センターに最後の時が迫っていることを知る由もなかった。逃げ惑う人々の間をすり抜けながらタワー1の内部に侵入していくマクローリンたち5人の警察官たち。しかし、轟音とともにワールド・トレード。センターの崩壊が始まり、5人は倒壊に巻き込まれていく。

 暗闇の中でマクローリンは目を覚ます。名前を呼ぶと、ヒメノとドミニクから返事があった。マクローリンとヒメノは瓦礫に挟まれ身動きが取れなくなっていた。ドミニクは身動きが取れたので助けを呼びに行こうとするが一人になることを怖れるヒメノを気遣いその場に残って瓦礫を退かそうとする。しかし、再び落下してきた瓦礫が直撃し、ドミニクは命を落とす。

 ワールド・トレード・センターを襲った事件はアメリカのみならず世界中に配信されていた。マクローリン家やヒメノ家にも親せきや友人が集まりその無事を祈っていた。マクローリンとヒメノは、激痛に気を失いそうになりながら互いの家族の話をして、お互いに必ず生き延びようと励ましあう。しかし、倒壊したワールド・トレード・センターでは火災が続いており、炎の塊が降ってくる。迫りくる死の恐怖に錯乱し、呑み込まれそうになりながら、マクローリンとヒメノは必死に理性を保とうとする。どれくらいの時間が経ったか――。助けを求めてヒメノが叩いた金属パイプの微かな音は確かに届いていた。



【感想】

 どう捉えたらいい作品なのだろう。そう感じた映画だった。9.11アメリカ同時多発テロは世界の歴史を変えた出来事だったが、この作品で描かれているのは同時多発テロ事件そのものよりも、瓦礫の中に取り残された2人の港湾警察官の絶対に生きよ残ろうとする姿と、生存を信じ待ち続ける家族の姿、生存者救出のために二次災害を恐れずに救出しようとする救助隊員の姿。あの日の、戦場のような現場がリアルに再現され、生き埋めになったマクローリンとヒメノを絶望と微かな希望にすがりながら帰還の報告を待つ家族が生々しく描かれている。

 その後のアフガニスタンへの報復戦争などには触れず、できるだけ政治的な思想を排除しながら家族との愛とか、他人の他の為に命を張る勇気とか……人間が持っている誇るべき部分を描いた作品なのだろうと思う。一連のテロ事件では3000人近い死者が発生した。負傷した人。大切な人を失い苦しんだ人――。数えきれない人たちが苦しみ、悲しんだ。そしてワールドトレードセンターでは、多くの警察官や消防士などが中の人たちを避難させようと中に入り、予想もつかないビルの倒壊によって命を落とした。生き残った二人の警察官の物語を通じ、生きることの意味――死んだことに意味を見出そうとしているようにも思えた。

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