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万博の太陽(2024年)



万博の太陽 テレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアム(テレ朝動画)

DATE


日本

監督 : 田村直己


<主なキャスト>


朝野今日子 : 橋本環奈

万田千夏 : 飯豊まりえ

倉本鉄平 : 木戸大聖

朝野陽子 : 堀内敬子

霧島部長 : 矢島健一

山本留吉 : 安井順平

勅使河原満 : 飯田基祐

勅使河原やよい : 大原優乃

万田和世 : 江口のりこ

万田昭太朗 : 唐沢寿明

          ……etc


目次
『万博の太陽(2024年)』の作品解説
キーワード『1970年の日本万国博覧会(Expo'70:昭和45年(1970年))』
『万博の太陽(2024年)』のストーリー
『万博の太陽(2024年)』の感想



【作品解説】

 2024年3月にテレビ朝日系列で放送されたテレビドラマスペシャル。テレビ朝日開局65周年記念作品として制作・放送された。アジアで初めて開催された万国博覧会を背景に、万博で働くことを夢見る少女と家族の物語。


【1970年の日本万国博覧会(Expo'70:昭和45年(1970年))】

 1970年(昭和45年)3月15日から9月13日の約半年間にわたり、大阪府吹田市の千里丘陵で日本で初めて――アジアで初めての万国博覧会である日本万国博覧会(Japan World Exposition Osaka 1970,Expo'70)が開催された。開催地の地名から、大阪万博という略称が多く用いられた。「人類の進歩と調和」をテーマに、終戦から25年を経て高度経済成長を成し遂げ国民総生産(GNP)世界第2位となった日本の国家的な大規模イベントであった。多くの企業や研究機関、建築家や芸術家などが起用され、パビリオンの建設を始めとしてイベントや展示物の企画・制作に尽力した。また大阪市を中心とした会場周辺では関連道路や鉄道、地下鉄などの建設や開発が国からの支援6500億円などを投じて行われ、交通網の整備がすすめられた。

 日本を含めて77か国が参加し、124のパビリオンが並んだ。世界各国の文化や新技術が結集され、未来世界が作り上げられた。携帯電話など21世紀の社会では一般的となっている商品やサービスなども初登場した。テーマ館の太陽の塔や、アメリカ・ソ連といった人気パビリオンには長蛇の列が並んだ。アメリカ館では、アポロ12号が持ち帰った月の石の実物が展示されたが、あまりにも反響が大きく、数時間街にもなる行列が延々と続き、途中で体調を崩したり諦めて他のパビリオンに移動する観客も続出したという。そこで日本政府は、アメリカから友好の証として寄贈された月の石(アポロ11号が採取した)を日本館で展示したという。

 目標入場者数は3000万人で、後に4500万人に引き上げられたが、テレビ・ラジオで大きく取り上げられたり特番が組まれ国民の関心が否応なく高まる中、折からのレジャーブームも相成り、連日大盛況を記録した。万博開催中の半年間で6400万人強の来場者を記録したとされ、当時の史上最高記録であった。入場料、食事、売店などの収支で約165億円の黒字であったとされ、1851年のロンドンに始まる万博の歴史で初めて黒字を記録した万博であったという。大成功のうちに幕をとじた1970年の日本万博だったものの、批判がなかったわけではなかった。正式な国交がなかった中華人民共和国の参加がなかったことで万博の理念に反していると非難する声や、1970年の日米安全保障条約の更新から国民の目を逸らせる目的での開催であるとの声もあった。ともあれ、大成功に終わった1970年の日本万国博覧会は、1964年の東京オリンピックとともに、戦後日本の復興と発展を象徴する国家的イベントとして記憶されている。


【ストーリー】

 日本が戦後の復興期を終え、高度経済成長の時代へと移っていた1968年。東京の畳屋の娘、朝野今日子は、好奇心旺盛で再来年に迫った大阪で開催される万国博覧会に興味津々。高校を卒業して稼業を手伝っている。父親は数年前に他界していた。22歳という年齢もあり、早く結婚させたい母の意向もあり、お見合いを受け続けているものの、お見合い相手に「私の夢は万国博覧会で世界中の人たち繋がることです」などと言ってしまい、お見合い失敗記録を伸ばしてしまう。そんな折、大坂で町工場を営む伯父の万田昭太朗の仕事を手伝うことに。大阪へ向かった今日子は、昭太朗の妻・和世、従妹の大学生の千夏、従妹で小学生の博士の家族に迎え入れられる。

 ある日、万田家に倉本鉄平という若者が訪れる。彼は、建築家・丹下健三の設計事務所に勤めていて、千夏の見合い相手であった。鉄平は、穏やかでハンサムな好青年だった。彼が土産として持参したレトルトカレーと共に、万田家に好感を持って迎えられた。千夏の通う大学で、教授から大阪万博のパビリオンで働くコンパニオンへの申込書を渡される。千夏は、今日子にも一緒に受けないか誘うが、今日子は自分は大学に行っていないからと断り、千夏も、どうせ正太郎の理解が得られないからと半ば諦めていた。実際、昭太朗はコンパニオンの募集のことを知ると激怒して反対する。女は、早くに結婚するべきという昭太朗の価値観――当時としては決して異常な考え方ではなかった――を振りかざし、全否定する昭太朗に、今日子はブチギレて反論する。良い言葉に買い言葉で、昭太郎に追い出されてしまった今日子。追いかけてきた千夏からは言いたいことを言ってくれたと感謝されるが、今日子は思ったことを考えなしに言ってしまう自分の性格に自分でも呆れてしまう。しかし、博士が不良2人に絡まれているところに遭遇し助けようとしたところに、今日子を探していた昭太郎が駆けつけ、「女、子供に手を出すとは」と不良に飛びかかっていく昭太郎。結局、ボロボロになって帰宅した昭太郎と今日子は、喧嘩していたことを忘れて鉄平が再び持ってきたレトルトカレーに舌鼓を打つ。

 やがて昭太郎の町工場にも若者が就職し、人手不足は解消に向かっていた。東京に戻ることを考え始めた今日子に、千夏が思い出作りに万博のコンパニオンに一緒に応募しないかと誘う。結果は今日子は書類審査で落ち、千夏は採用された。布団の中で今日子は千夏に、生前の父との思い出を話す。戦争を経験した父親は、戦争の話をしたことはなかった。そんな父が、テレビで家族と一緒に東京オリンピックの閉会式を見て涙を拭っていた。戦争で辛い経験をした父は平和のありがたさを誰よりも知っていたし、平和になったことを実感した涙だったのだろうと今日子は語る。今日子の万博への思いも、そこから来ていた。それを襖の外で聞いていた昭太郎は、今日子を連れて、コンパニオンの募集していた大手電機メーカーのビルに直談判に向かう。しかし、コネも何もない昭太郎と今日子の直談判が通るはずもなかった。

 ビルを出た昭太郎と今日子は、鉄平と偶然遭う。万田家で、二人の話を聞いた鉄平は、万博のエキスポ・シスター(警備)の仕事が募集をかけていることを教える。締め切り直前だったので大急ぎで書類を提出する今日子。書類選考は通り、東京の母からの激励を受け、試験と面接に挑む。面接では万博に対する並々ならない熱意を語る。無事に採用通知が届き選抜メンバー15人に選ばれる。今日子は万博が終わるまでは万田家に残ることになった。今日子も千夏も研修で大忙しになる。制服が届き、千夏と今日子は万田家の面々に披露するも、昭太郎はスカートが短すぎると不満そうであった。万博会場で働くことになると、広場の設計をした事務所に勤務する鉄平と顔をあわせる機会も増える。太陽の塔の制作者である芸術家・岡本太郎が広場の天井に穴を開けろと言い出す。しかし、設計者の丹下が何というか……。板挟みになって悩んでいる鉄平に、実際にテーマ館から顔をのぞかせる太陽の塔を想像してワクワクする感情を隠さず、穴を開ければいいとあっさりと今日子は言う。鉄平は、素人考えで気軽なことを言う今日子に反発し口喧嘩になる。そんな二人のやり取りを、千夏は複雑な気持ちで見つめていた。



【感想】

 このドラマが制作されたのは2025年4月に開幕した「大阪・関西万博」が開幕する約1年前。これから始まる万博への関心が高まる中、約50年前に日本を熱狂させた大阪万博を物語の背景に据えたドラマを制作しようというタイミングは分からないでもないけれど、ドラマとしての出来は普通の2時間ドラマかな、という感じ。昭和の雰囲気を上手く描いたドラマだったと思う。一つトラブルが起きても数分後には解決している感じなので、イマイチ盛り上がりに欠けると感じた。一つの家族を通じて万博に浮かれる社会の様子と、人生や社会の価値観が変わりつつあり、戦後の復興期を支えてきた中小零細企業が苦境に立たされる様が上手く描かれ、未来に夢を見る意味を感じられる作品だったと思う。