三国志(1992年~1994年)





  

DATE

日本

監督:勝間田具治


<主な声の出演>

第一部 英雄たちの夜明け(1992年)

曹操孟徳:渡哲也
劉備玄徳:あおい輝彦
張飛翼徳:石田弦太郎
関羽雲長:青野武
呂布:津嘉山正種
麗花(劉備の妻):潘恵子
貂蝉:吉田理保子
玄徳の母:中西妙子
陳宮:家弓家正
ナレーター:金内吉男
         ……etc


第二部 長江燃ゆ!(1993年)

曹操孟徳:渡哲也
劉備玄徳:あおい輝彦
関羽雲長:青野武
張飛翼徳:石田太郎
諸葛孔明:山口崇
魯粛:家弓家正
孫権:柴田秀勝
周瑜:屋良有作
趙雲:堀秀行
麗花(劉備の妻):潘恵子
秀蘭:杉山佳寿子
玄徳の母:中西妙子
張遼:中田浩二
劉表:八奈見乗児
董承:宮内幸平
司馬徽:槐柳二
ナレーター:金内吉男
         ……etc


完結編 遙なる大地(1994年)

曹操孟徳:渡瀬恒彦
劉備玄徳:あおい輝彦
関羽雲長:青野武
張飛翼徳:石田太郎
諸葛孔明:山口崇
鳳姫:鶴ひろみ
司馬懿仲達:大塚周夫
陸遜:池水通洋
馬謖:田中秀幸
馬良:田中康郎
馬超:橋本晃一
ナレーター:石原良
        ……etc



目次


『三国志(1992年~1994年)』の作品解説

キーワード『三国志演義』

『三国志(1992年~1994年)』のストーリー

『三国志(1992年~1994年)』の感想



【作品解説】

 1992年から1994年にかけて劇場公開された、中国の古典『三国志演義』を原作にした三部作のアニメ映画。製作費15億円、10年の歳月をかけての制作だったという。声の出演には、曹操に渡哲也、劉備にはあおい輝彦が起用された。完結編では渡哲也が病気のため、弟の渡瀬恒彦が代役を務めた



【三国志演義】

 中国で魏、呉、蜀の三国がそれぞれ皇帝を立てて覇権を争った時代があった。いわゆる三国時代である。漢王朝(紀元前202年~220年)は無能な皇帝が続き、宦官や外戚が国政を牛耳るようになった。184年の黄巾の乱をきっかけに、漢王朝の統治能力は大きく衰え、群雄割拠の戦国時代を迎える。その中で華北を支配した曹操、益州を支配した劉備、長江以南を支配した孫権が力を持ち、覇権を競って争うようになる。広義では黄巾の乱の勃発から280年の晋による中国統一までを指す。狭義では220年の後漢の滅亡、もしくは220年の魏の曹丕(曹操の長男)、221年の蜀の劉備、229年の呉の孫権がそれぞれ皇帝を名乗って三国が分立してから蜀の滅亡によって三国の鼎立が崩れる263年までを指す。

 陳寿が、三国時代の後の晋の時代に記した「三国志」は、清の時代(1616年~1912年)に制定された二十四史の一つとして中国歴代王朝の正史に加えられている。「三国志」は「魏志」30巻、「蜀志」15巻、「呉志」20巻でそれぞれ独立した書物として記述し、合わせて「三国志」としていたことが特徴であった。しかし、「魏志」のみに本紀が設けられていることから、魏を正統としているものと考えられている。しかし、漢王朝の正当な後継としての蜀への大きな配慮がなされていること(陳寿は蜀の生まれで、蜀の宮廷に仕えていた時期がある)は、多くの研究家が指摘するところである。

 漢王朝末期や三国時代を舞台にした説話や講談は古くから存在していたという。北宋の時代(960年~1127年)には、蜀の劉備を主役に、魏の曹操を悪役に据えるイメージが出来上がっていたという。元の時代(1271年~1368年)には、三国の争いについてまとまった形で書かれた最古の白話文学(日常の話し言葉を用いて書かれた中国の文学形式)である「三国志平話」が刊行(「全相平話五種」に「新刊全相平話三國志」の題で収録された)された。「三国志平話」は「三国志演義」の原型の一つと考えられているが、「三国志演義」より民間伝承が色濃く、荒唐無稽な話も多く含まれた通俗的な小説となっているという。

「三国志演義」は元の時代の末期か明の時代(1368年~1644年)の初め頃に成立したと言われる長編白話小説である。羅貫中によるものと言われるが、著者については未だ定説を見ていないという。「西遊記」や「水滸伝」とともに四大奇書の一つとされ、清の時代には広く普及したという。蜀を正統とし、劉備を主役に曹操を悪とするイメージは維持しながら、それまでの説話や講釈などにあった極端に荒唐無稽な話や時系列や時代背景を無視した展開や要素をなるべく排除し、漢王朝末期の混迷の時代から三国時代、新たな統一王朝である晋の成立の頃までを史実に近づけながら、英雄や豪傑たちの活躍を描いたエンターテイメント性豊かな長編歴史小説となっており、現代でも愛好者の多い作品である。



【ストーリー】

 舞台となるのは2世紀終わりから3世紀半ばにかけての中国大陸。漢王朝の皇帝は力を失い、民衆の反乱によって武将たちが力を持ち、互いに争い策謀をめぐらせる群雄割拠の戦国時代をむかえる。その中で、大きな勢力を持つに至ったのは魏の曹操、蜀の劉備、呉の孫権であった。それぞれ皇帝を名乗って覇権を争ったいわゆる三国時代。そんな権謀術数入り乱れる中で生きた英雄たちの物語。

「第一部 英雄たちの夜明け」

 第一部では黄巾党を名乗る新興宗教の一群の蜂起(黄巾の乱)から呂布の死までが描かれる。漢王室の末裔であり高い志を持ちながら、今は田舎で貧しい生活を送っている劉備玄徳。ある時、劉備は張飛翼徳という豪傑と出会う。劉備の徳に惚れ込んだ張飛は、友人で子供たちの私塾を開いていた関羽雲長と劉備を引き合わせる。劉備、張飛、関羽の3人は、桃園の誓いを結び、義兄弟となった。劉備は義勇軍を結成し黄巾討伐に立ち上がった。劉備が率いる義勇軍は難民らにも食料を分け与えるが、官軍の指揮官からは大切な糧食に手を出したと非難される。しかし、各地を転戦する義勇軍は目覚ましい戦果をあげた。黄巾の乱が終結した後の劉備は田舎の行政長の官職を得るが、中央からの役人に賄賂を渡さなかったため酷い侮辱を受け、これに激昂した張飛がその役人を半殺しにしてしまい、官職を失ってしまう。

 黄巾の乱の後、洛陽の都を支配したのは西涼の太守、董卓だった。幼い献帝の守護者として振舞いながら暴政の限りを尽くす董卓。曹操孟徳は董卓暗殺を企てるが失敗し、故郷へと逃げる。その最中、陳宮という男と行動を共にする。陳宮は地方の官吏であったが、曹操の乱世の奸雄としての資質を見抜き、官職を捨てて同行することにしたのだった。たが、道中で曹操は縁者のところで宿を借りたが勘違いから一家斬殺してしまう。その非情な行動に、陳宮は曹操と袂を分かつ。曹操は、董卓討伐の檄文を飛ばす。その檄文に呼応し、続々と武将たちが集まってくる。その盟主に担ぎ上げられたのは河北の太守・袁紹であった。そして同盟軍には、放浪の末、北平の太守・公孫瓚のもとに身を寄せていた劉備たち3人の義兄弟の姿があった。

 同盟軍の快進撃を続け虎牢関に迫るが、虎牢関を守るのは天下無双の誉れ高い猛将・呂布。呂布の前に同盟軍は惨敗し、呂布一人のために戦況はひっくり返されそうになっていた。しかし、劉備、関羽、張飛の3人がかりで呂布を退却させ、董卓は洛陽の都を焼き、長安へと逃れる。同盟軍は董卓を殺すことができなかった。長安では漢王室の忠臣である司徒の王允が董卓の専横を嘆いていた。董卓と呂布が手を組んでいる今、誰にも董卓を排除できない。しかし、両者を仲違いすることができれば……。一計を案じた王允は、養女の貂蝉を餌にして両者の間に楔を打ち込もうとする。策はうまくいき、呂布は董卓を殺害。呂布も長安を追われる。国はまた乱れる。苦しむ民衆の中に、まだ若い諸葛孔明の姿もあった。

「第二部 長江燃ゆ!」

 第二部では、曹操の下に身を寄せていた劉備が、赤壁の戦いを経て、荊州の地を手中にするまでを描いている。董卓、呂布が消えた後の漢の宮廷で力を持ったのは曹操であった。劉備は曹操の下で、城も国も持たない浪人の立場に甘んじていた。ある日、曹操は自らの勢力を見せつけるために帝を招いての巻き狩りを開いた。狩りに参加した劉備たちは、曹操が帝に対して無礼を働くのを目撃する。その行動に関羽は思わず剣の柄に手をかけた。それを見ていた帝の側近が、劉備と帝を引き合わせる。帝は曹操を排除したいと考えており、密勅を記した金の帯を劉備に渡す。曹操はそんな折、袁術が兄の袁紹を頼って北上を始めたという知らせが届く。劉備は曹操に袁術討伐の軍勢と指揮権を借りたいと申し出る。それは劉備が、曹操から離れるための口実でもあった。袁術を滅ぼした劉備は、母親と妻がいる徐州城へと向かう。徐州城を奪い取った劉備は、曹操と対決する覚悟を固める。

 曹操は劉備を討つべく20万の軍勢を派遣する。劉備は、袁紹を味方に付けるために使者を送るとともに、曹操の軍勢が長い行軍で疲れているだろうと踏んで夜襲を仕掛ける。しかし、曹操は夜襲を読んでおり、劉備軍は大敗し、徐州城は焼け落ちた。徐州城を守っていた関羽は、曹操軍の旧知の将、張遼の説得や劉備の妻が生きていることを知り、曹操の軍門に下る。曹操は関羽の才を高く評価しており、自分の手元に置いておくために連日歓待し高価な贈り物をするが関羽の劉備への気持ちは変わらなかった。曹操は、関羽が何かしらの戦果を挙げて義理を返したら去っていくと考えて、手柄を立てさせないようにしようと考えていた。しかし、北方の雄・袁紹が南下し、許昌へと軍を進める。曹操も軍を率いて戦うが、袁紹軍の豪傑、顔良、文醜の前に総崩れとなってしまう。戦場に赴いた関羽は、あっさりと顔良、文醜を斬り、袁紹軍に劉備の姿を見る。関羽は、曹操に暇を請い、関所を突破して劉備の下に向かう。

 再会した3人の義兄弟。さらに趙雲子龍という豪傑が仲間になる。趙雲は劉備に荊州に向かうように勧める。荊州を治める劉表は優れた人物を集めて保護していた。荊州についた劉備は新野城を任せられ、平穏な日々を迎えていたが、未だ何も成しえていないことに悩む日々であった。そんな折、劉備の耳に諸葛孔明という人物の名が入ってくる。孔明の住居を訪ねるもなかなか出会えず、三度目の来訪でようやく話をすることができた。孔明は、曹操、孫権が実権を握る地はそのままにしておき、劉備は荊州、そして蜀の地を手に入れて三者が互いににらみ合う状況を作り出すこと――すなわち天下三分の計を進言する。劉備はその遠大な計略に感銘を受け、孔明もまた劉備の人徳に触れて軍師として仕えることを決める。その頃、曹操が袁紹を破り、広大な北の地を手に入れていた。曹操は50万の大軍を率いて荊州へ進軍を始めた。劉備の守る新野城ではとても50万の大軍を守ることはできない。荊州では劉表が死に、後を継いだ劉琮は曹操に帰順する決意を固めていた。逃避行を始めた劉備に、大勢の民衆が付いてくるが、そのために行軍は遅れ、劉備の妻が命を落としたほか、多くの悲劇が起こった。曹操軍を破るには呉の孫権と力を合わせてこれにあたるしかない。呉では曹操に対して開戦か恭順かで国論が二分されていた。孔明は呉を開戦に踏み切らせるために向かう。三国志演義の中でも名高い赤壁の戦いの幕が開こうとしていた。

「完結編 遥かなる大地」

 完結編では、劉備が蜀を手に入れ、やがて呉との戦いの中で劉備、関羽、張飛の義兄弟が没し、蜀を支えながら魏との戦いを続ける孔明が五丈原の陣中で没するまでを描いている。荊州を手に入れた劉備は、荊州を孔明に任せ、龐統士元を軍師に蜀への遠征を始める。蜀を治める劉璋は劉備の力を借りたいと思っていたが、蜀の臣下の中には劉備を敵視するものもあり、その警告の矢文が劉備の元に届けられる。蜀の首都、成都についた劉備は、漢中の張魯を倒すべく兵を動かすが、その戦いの最中、呉の孫権や臣下にそそのかされた劉璋が裏切る。龐統が命を落とし、孔明は関羽に荊州を託して劉備の救援に向かう。行軍の最中、敵の罠に嵌り馬超という豪傑に襲われ窮地に陥る孔明。孔明を救ったのは鳳姫という娘だったが、彼女は自分を関羽の娘だと言う。関羽に娘がいるなどという話を聞いたことはなかったが孔明はその言葉を信じる。蜀軍との戦いの中で窮地に陥った劉備は、加勢に駆け付けた張飛に救われる。成都へと軍を進める劉備に、馬超は配下に加わることを申し出る。馬超は劉璋を説得し、成都は無血で開城される。

 劉備は鳳姫を荊州への使者として向かわせる。これは鳳姫を関羽と親子の名乗りを上げさせたいという配慮でもあった。孫権は荊州を手に入れるために関羽暗殺の兵を動かすが、その窮地を鳳姫が救う。心当たりのない関羽だったが、鳳姫が身の証を示すと関羽は20年前、戦の中で誤って死なせてしまった農民の娘であったことを思い出す。改めて父娘として過ごすことになった関羽と鳳姫。しかし、そんな喜びもつかの間、曹操が漢中を手中に収めた。劉備は曹操と対峙し、鳳姫が関羽の名代として援軍を率いて戦場へと向かう。劉備の軍勢は曹操をあと一歩のところまで追いつめ、漢中から追い払う。劉備は漢中王となる。曹操は孫権に荊州攻略を持ちかける。荊州を守る関羽は呉の若き軍略家、陸遜の計略に嵌り捕らえられ殺される。しかし関羽が死んだとなれば蜀が全軍を上げて報復に来るは必至。そのことに気付いた孫権は、関羽の首を曹操のもとに送り、劉備の怒りを曹操に向けさせようとする。曹操は関羽の首を懇ろに葬り、劉備に恩を売ろうとする。曹操は、関羽のことを首になっても二国を震え上がらせると評する。

 曹操が没した。後を継いだ曹操の長男、曹丕は漢王室の皇帝から武力で帝位を奪い魏皇帝を名乗った。それに対し、劉備は漢王室の血を引く者として蜀皇帝を名乗った。孫権も天子を名乗り、ここに魏・呉・蜀の三国が並び立つ時代を迎えた。しかし、劉備は関羽の恨みを忘れたわけではなかった。呉を討伐する兵を上げようとした矢先、張飛が部下に暗殺されてしまう。劉備は孔明を蜀に残して呉へと攻め入った。緒戦で大被害を受けた呉は陸遜を大都督に任命して迎え撃つ。陸遜は全軍に討って出ないようにと命じた。劉備軍は猛暑と水不足で倒れる兵が続出し、森の中に布陣を敷く。これは陸遜の狙い通りであり、乾いた森の中で強風が吹き荒れる中、森に火が放たれた。焼け出された劉備は何とか逃げ延びるが、傷心の末、病に倒れた。劉備は孔明に後事を託し、この世を去る。関羽を失った鳳姫は、孔明が最もその才を愛していた馬謖と共に学び、孔明を支えていた。



【感想】

 私が「三国志演義」に初めて触れたのは横山光輝の漫画「三国志」だった。中学校の図書館に全巻が置いてあったからだった。その中で描かれる豪傑同士の一騎打ちや、軍略家同士の頭脳戦を楽しんで読んでいた。今回紹介している「三国志」では、そういった派手な面白さやエンタメ性は押さえられている。一つ一つのエピソードを通じて人としての倫理や道徳を描くことに重点を置いて描いているように感じた。「三国志演義」は英雄たちの生き様、過ちなどを通じて様々な教訓を得られる作品でもあると思う。一つでも多くのエピソードを盛り込みたいと思うのも当然だろうし、第1部、第2部ではその為にこだわっているように感じていた。それだけに、尺の都合もあったのだろうが完結篇ではで鳳姫というオリジナルキャラクターを出して、彼女と孔明のエピソードに多くを費やすという路線変更をしたのにはやや面食らった。

「三国志演義」は約100年の時間を描いた長大な物語である。今回ご紹介しているアニメ映画「三国志」は、1本約2時間半で3部作という時間を取っているが、それでも全容を描くには短すぎ、原作の中でも主要な物語をつまみ出しながら慌ただしく駆け抜けていったような印象を受けた作品だった。その分、三国志演義の入り口にはいいのかなと思う反面、多少予備知識があったほうが、楽しんで見られるかもしれないな、とも思う。「三国志演義」を描いた日本のアニメ、テレビドラマなどで桃園の誓いから孔明の陣没までを描ききった作品というと少ないので、そういう意味での価値のある作品ではないかと思う。

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